2014年03月29日

移動ロスの少ない素早い運足とは

結論から。
移動ロスが少ない運足とは・・・
出来るだけ、上下動が少なく、かつ摩擦抵抗の少ない移動です。
※移動ロスが多くなる・・・移動スピードが遅くなる。

物理的に言えば当たり前です。上下動しない水平移動が最短距離で
の移動であり摩擦抵抗が少ないほど、素早い移動が可能になります。
ただ、床面を水平移動する場合、摩擦抵抗がどうしても発生します。
如何に摩擦抵抗を低減するかが、カギとなってきます。

物理学の付録 ← 興味のある方はクリックしてみてください。
              新しく開きます。


(1)摺り足運足と跳躍気味の運足
*************************************************************************
大抵の合気道道場(主に合気会や養神会系列等)では、摺り足
運足を基本としている道場が多いのではないでしょうか?

合気道の教本を見ても、摺り足で運足するとは、一言も書いていない
ので、勘違いでしたら、ごめんなさい。
ただ、『スッスッスッ』と畳の上を水平に動いているのは確かです。

あるいは摺り足ではなくて、『できるだけ畳上を擦らないように軽い
フットワーク(運足)で、かつ上下動せずに移動する』という表現が
正しいのかも知れません。

ところが、藤平光一師範が築いた心身統一合氣道(氣の研究会)は、
跳ね上がるような運足を行っています。下記URLのYoutube動画
サイトを参照してください。

・Aikido ( Koichi Tohei )
http://www.youtube.com/watch?v=sh3S3RX5JPM
横面打ちが一番分かりやすいかと思います(転身での移動量が多い
ため)。26:30から横面打ちです。

・Koichi Tohei : Strength vs Ki - Aikido
http://www.youtube.com/watch?v=MuZdxhA_h4Y
お弟子さん達も跳ねながら体捌きを行っているのが分かるかと
思います。※3:28の横面打ち入り身投げや横面打ち四方投げ、
それから8:08からの体捌きと正面打ち入り身投げが、分かり易い
かと思います。

このような運足を跳躍気味のステップと呼ぶことにします。

我が道場にも、心身統一合氣道出身の先生がひとりいて、摺り足
ではなく跳躍気味の運足を奨めております。上下動でリズム感の
ある体捌きが良いと仰っています。摺り足では、移動ロスが起こる
ことを当の先生も仰っております。摺り足と跳躍気味ステップの運足
の長所と短所をそれぞれ下記に示します。お互いに相反しています。

@摺り足
  長所:上下動(跳躍)する分の移動ロスがない。
  短所:床面に擦るため摩擦抵抗あり、その分移動ロスがある。
A跳躍気味のステップ
  長所:床面に擦らないので、その分の移動ロスがない。
  短所:上下動する分の移動ロスがある。

@とAの中間が理想的な運足と思います。

当の先生が仰るように、横面打ちでの転身の捌きが大きい場合、
移動量も多いため、摺り足では追い付かず、跳ねた方が、素早く
移動できる感じです。

※横面打ちの足捌き(転身=内転換)の角度には、60°、90°、120°
があります。60°のような狭い角度では移動量も少ない為、摺り足でも
可能ですが、120°にもなると、跳躍等何らかの手段で足を床面から
離して、床面と摩擦せず移動することが必要になってきます。

正面打ち入り身投げにおいても、初動の入り身は一足飛びに、受けの
斜め後方へ入り身します。摺り足では追い付かないと思います。
上下動し過ぎは確かに良くないと思いますが、一足飛びに入り身する
場合、多少身体を浮かせる移動が必要になってくるでしょう。

芦原空手のサバキでも入り身の距離が大きい為、おそらく一足飛びに
身体が多少浮いたフットワークに成っているのではないかと思います。
関連ブログ記事:芦原空手
*************************************************************************


(2)居着き
*************************************************************************
跳躍気味のステップに関しては、賛否両論があるようです。
確かに、摺り足に関しては、武道一般で広く言われている『居着き
が生じますし、移動量が多い体捌きになると不利になるでしょう。

居着き
相手の動きに対応できない状態になること。疲れたり、迷ったりして、
心身のバランスが崩れて、動きが止まってしまったときなどに起こる。
剣道、スポーツチャンバラでよく使われる言葉。他に空手や日本拳法
等の格闘技の試合でも、運足の状況によっては当てはまる言葉です。

居着きを無くす為、跳躍気味にステップするのは心身統一合氣道だけ
ではありません。他の武道・格闘技全般に見られることです。空手道、
日本拳法、剣道、フェンシング、ボクシング、キックボクシングでは、
常時ポンポン跳ねながら移動しています。

それらの武道・格闘技では、その場に留まっている場合でも、ポンポン
跳ねています。次の攻撃や保守体勢に素早く移れるよう機会を伺って
いるわけです(下図参照)。

キックボクシングや空手の試合
▲キックボクシングや空手の試合:日本拳法や剣道等でも跳ねます。

試合が無いからなのか、どうかは分かりませんが、心身統一合氣道
では、その場に留まっている場合に限っては、他武道の如くポンポン
跳ねてはいませんけどね。

先の結論でも申し上げましたとおり、上下動が無く、かつ摩擦も無い
ステップが一番移動ロスが少なく、効率の良い運足になるでしょう。
我が合気道道場では、上記以外の先生で、そのように申していた先生
もおりました。
*************************************************************************


(3)上下動なしの運足でも、素早く動くには・・・
*************************************************************************
1.半身の歩幅を狭める
合気会の師範で、大澤師範(現七段)がいらっしゃいますが、両足の
間隔を肩幅くらいに置いた半身の姿勢を取っています。半身としては
両足の間隔が狭い体勢です。

一般的には、両足の間隔を肩幅よりも広く取った半身の姿勢が多く
採用されていることでしょう。

下記に、両足の間隔が狭い場合と広い場合との長所や短所を比較
してみました。

@両足の間隔を狭くした場合
 ・長所:素早い移動が可能(フットワーク=運足 が軽くなる)
 ・短所:安定性が悪くなる。
A両足の間隔を広くした場合
 ・長所:安定性が良くなる。
 ・短所:居着きやすい。素早く動けない。

ただ@のように、両足の間隔を狭く取った場合、長時間の維持は
かなり疲れると思います。足腰が強靭な大澤師範だからこそ、可能
なのではないかと思います。

※大澤師範は元ボクサーだったとか。元ボクサーだからこそ狭い歩幅
  の半身スタイルなのかも知れません。

2.その他の方法
ネットや書籍で色々調べると、空手道で『上下動による跳ねるような
フットワークは良くないと』述べておりました。
※でも試合のときは、ポンポン跳ねているように見えますけどね。

では、どのように運足するのかというと、『つま先を浮かせて、
踵で押し出すようなフットワーク(運足)が良い』とのことです。

あれ? だから、『踵荷重が良い』という事なのでしょうか?
ネット上で見かけたのですが、つま先荷重や拇指球(親指の付け根)
での荷重よりも、踵荷重を推奨する合気道の先生がおられます。
これは踵だけに荷重して、接地面積を減らすという事かも知れません。

どなたかこの点について、詳細をご教授頂ければ幸いです。

関連ブログ記事:
自分の脳を操る・・・効率の良い力を出すのは正しい姿勢(外旋)から
※上記記事の中盤から後半に差し掛かったあたりで、踵荷重に
  ついての話があります。

ただ、踵寄りの荷重は、安定性に欠けると思います。

拇指球荷重は、転換のような回転動作があるときに必要ですが、
運足一般では、足裏全体で荷重する』が正しいのではないかと
思っておりました。

※バスケットボールのピボットターンやスキーのターンでも拇指球に
  荷重する場面があります(合気道の転換にも共通するコツです)。
関連ブログ記事:体軸(センター)について その3 「スキー」の場合
*************************************************************************


何分個人的見解が含まれるかも知れません。読者の皆さんは
それぞれの合気道道場の先生の教えに従ってください。

また、我々合気会の合気道よりも上下動が多い心身統一合氣道の
技法を否定しているわけではありません。合気会は基本上下動が
少ない足捌き・運足ですが、色々な流派で異なる考え方があって
然りだと思います。

他流派の考え方も、時には検証・研究しても良いのではないで
しょうか?色々と試してみることも必要かも知れません。

ただ道場での稽古の時は、それぞれの流派や先生の指導に従うべき
です。『基本も出来ていないにおかしな事をやるな!』、『誰がそんな事
を教えた?ちっ(怒った顔) と怒られないようにしましょう。ふらふら


読んでいただき、ありがとうございます。

合気道ブログで日々の稽古を考える。

紹介:札幌で合気道するときは・・・札幌合気道会について
物理学の付録
合気道ブログ|稽古日記 posted by Aiki_Master at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月17日

合気道は実戦で使えないのか?なぜ試合を行わない?

先日の記事で、少林寺拳法をされている方からコメント頂きました。
私から『少林寺拳法は、当身技が剛法として編纂されていることから
合気道より実戦的かも知れませんね』と返答しました。この内容が
皆様に誤解を与えているかも知れませんので今回記事を記しました。

結論から。
Q1.合気道は実戦で使えないのか?
A1.@合気道を使う者のレベルによる。
     Aそもそも、戦ってはいけない。格闘技ではない。
      合気道は相手と調和・和合するための武道である。

Q2.合気道は、なぜ試合を行わない?
A2.@勝敗に拘ると正しい理合いが身に付かないから。
     Aそもそも、戦ってはいけない。格闘技ではない。
      合気道は相手と調和・和合するための武道である。


【A1-@について】
**************************************************************************
1.合気道を使う人のレベルによります。

植芝盛平合気道開祖や塩田剛三先生のような達人であれば、
他の格闘技や武道・武術のプロと渡り合えるレベルだと言えます。

2.実戦で使えるようになるまでは他武道や格闘技より時間がかかる。
  空手の方が合気道よりも、実戦レベルに達するのが早いです。
  合気道ですと、人によっては10年かかっても実戦レベルに達する
  ことが難しいかも知れません。そもそも稽古の目的が、健康のため
  という人も居るでしょうから。合気道の稽古目的でも変わる。

  例:単純に段で比較するのも正確さに欠けますが・・・
  平均的に、合気道初段と空手初段で比較すると、空手初段の方が
  圧倒的に実戦レベルに近いと言えるでしょう。
  しかし、同じ段でも、やはりその人個人のレベルによると思います。

3.実戦レベルに達するのが早い(即効性が高い)武道ほど相手に怪我
  を負わせる確率が高いと言える。即効性と安全性は反比例する。
  相手に怪我を負わせる確率で言えば、合気道技の方が安全である
  とも言えます※。しかし更に反面、怪我を負わせずに相手を制する
  のは、難易度が高いです(要求される技術レベルが高い)。
  ※合気道でも素人相手に手加減なしに投げると、怪我させる可能性
   はあります。難易度が高い合気道であるからこそ即効性は低い。
**************************************************************************
※A1-AはA2-Aと全く同じなので、まとめて最後に記します。


【A2-@について】
**************************************************************************
試合や乱捕りを行うと、勝敗に拘る為、正しい理合いの習得に妨げが
生じます。体捌きで投げるのではなく、力に頼った技に成る恐れが
あります。

関連ブログ記事:型稽古と乱捕稽古の比較(利点や欠点)

柔道も、最初は柔術の理合いを誰もが気軽に習得できるようにと、
スポーツ化・競技化した訳ですが、開祖嘉納冶五郎の理想と反して、
実際には体格が大きく力のある方が有利な武道に成っています。

小さい者でも、大きい者の力を利用し、技術で力を制すること
合気道を始めとする柔術系武道・武術の究極の理想です。

※合気道は関節技で投げる事が多く、乱捕り化・競技化すると危険な
  状況が考えられますが、そのような点を改善・考慮した武道が柔道
  です。合気道を改善したのが柔道という意味ではありません。
  柔術の投げ(関節)技をそのまま試合や乱捕りで行うのは、危険性
  が高くなるという意味合いです。
  柔道より合気道の方が競技化は難しいのは上記理由からです。

  柔術から合気道や柔道が生まれ、別々の道を辿って来ました。
  後に試合や乱捕りを行う合気道として、富木合気道、合気道SA、
  フルコンタクト合気道などが創始されましたけどね。
**************************************************************************


【A1-A 及び A2-A について】
**************************************************************************
相手を敵とせず、相手を自分の味方にしてしまうこと。調和や和合が
合気道の理念です。開祖は『真の武は愛なり』、養神館合気道創始者
塩田剛三先生は『合気道で最も強い技は殺しに来た相手と友達に
なることさ』という名言を残しています。相手を受け入れ相手と自分が
一つになることを『全てを愛し敵とせず争わない心を持つことが、宇宙
と調和することを意味する』と表現しています。

関連ブログ記事:
合気道には、格闘技に回帰した流派もある

格闘技から愛の武道へ

また、勝敗を決めると勝った者は気分が良いけど、負けた者は、負の
感情を抱くことになり、これも和合の理念に反することになります。
勝敗に拘らない』のも、合気道の考え方のひとつです。
**************************************************************************


記事の最初にある『合気道より実戦的かも知れませんね』と返答した
事につきましては、『合気道よりも少林寺拳法の方が実戦ですぐに
使いやすい武道ですね』という意味です。即効性が高いという意味
です。また合気道は精神修養性が高いというのもA2-Aが理由です。

ネット上では合気道を「弱い武道」、「使えない武道」とか「踊り」とか
揶揄されることが多いです。そのように言う人達は、合気道とは
どういうものか、理解できていないから誤解しているのだと思います。

もし道場に見学に来られた方で、『合気道を稽古すると強くなれます
か?
』という旨の質問をされたら、私ならばこう答えるでしょう。
喧嘩や格闘技として強くなりたいのでしたら、空手やボクシング等の
方が早く強くなれますよ』と。加えて『精神的に強くなりたいのでしたら
合気道でも強くなれるでしょう
』と言うでしょう。
なれるでしょう』は、その人の心掛けや、稽古の考え方次第だから。
格闘技として即効的な強さを求めるならば、他の武道をお勧めします。

過去に、我が道場へ入会した後に、上記のような質問をされた方が
おりました。予想通り、いつの間にか来なくなりました。ふらふら
合気道は格闘技ではありません』の旨、話したからかも知れません。

稽古する武道、同じ合気道でも流派、それぞれ考え方も異なります。
自分が求める目的に合った武道・流派・会派、自分に合った道場や
先生を見つけて稽古するのが理想的です。わーい(嬉しい顔)


読んでいただき、ありがとうございます。

合気道ブログで日々の稽古を考える。

紹介:札幌で合気道するときは・・・札幌合気道会について

2014年03月10日

力の出る直前(力のゼロ地点その3)

今回も、前々回ブログ記事の続編的な内容となります。
合気道の稽古で学んだこと、合気道の稽古本で読んだことなどの
備忘録として、書いております。道場の先生によって見解の違いが
あるかも知れませんが、そこはご容赦願います。

関連ブログ記事:
力を出し切ったところで技を行う(力のゼロ地点その1)

力の作用線の側面(力のゼロ地点その2)



受け(相手)の力が作用せず、取り(こちら)の弱い力で受けを制する
ことが出来る場所を『力のゼロ地点』と呼んでいます。

突きを出す直前は、力を体幹部 ⇒ 肩 ⇒ 腕と溜めを作っている段階
であるため、ここも力のゼロ地点となります。簡単に抑え込めることと
なります(下図)。

力のゼロ地点:突きを繰り出す直前

間合いを詰めて、突きを繰り出す直前に密着し、相手(受け)の拳を
抑え込んで、崩し倒すこともできます。ただしこの場合、相手が突きを
繰り出す前に、相手の懐へ飛び込んで行く勇気が要ります。
素早い判断と素早い動作が要求されます。


突きではありませんが
合気道技で具体的な例としては、正面打ち一教)が挙げられます。
正面打ち一教の場合、相手が振り上げると同時に懐へ飛び込み、斬り
下げを阻止するので、『力のゼロ地点3』の利用例となります(下図)。

正面打ち一教(表)
▲図が下手過ぎて、ごめんなさい。ヤハズで支える箇所は肘です
(図の向かってこちら側の腕)。図では手首の下付近を抑えている
 ように見えますが、合気道の一教系の技(一教〜五教)では肘を
 返すのがポイントです。※肘を攻める
(『攻める』という表現は合気道にとって似つかわしくないですが)

関連ブログ記事:力の方向を変える(2)正面打ち一教の場合

ということは、斬り下げが始まってからでは、遅すぎることになります。
※以降、今回テーマから外れた話題ですが、合気道の話題として
  取り上げたいと思います。



斬り下げが始まってから対応するには、以下二通りの方法が残されて
います。(2)の裏は表(おもて)の技法のリカバリ的技法となります。
大東流合気柔術(合気道の源流的な武道)も、合気道も(おもて)の
技が上手く行かなかった場合のために、の技が考えられています。

(1)入り身の少ない腰の回転で、受けの正面打ちを側面へ落とす方法。
   ※一教(表)の別の技法。下図では、腰をきるタイプが相当します。
    半身半立ちでの正面打ち一教(表)はこの技法を用います。
    腰を回転させる分、入り身が少なくなります。
腰の回転で行う正面打ち一教(表)
▲上図の【通常タイプ】では「@で送り足」の時に、手刀は斬り上げ、
「Aで歩み足」の時、手刀は斬り下ろし という手順になる。

関連ブログ記事:
入り身の少ない腰の回転で崩す正面打ち一教の表(おもて)


(2)一教の裏:受けの正面打ちの斬り下げる力を利用して、受け流す。
   相手の側面〜背後へ入り身後、転換の体捌きで後ろ隅へ崩す。
正面打ち一教(裏)

正面打ち一教(裏):螺旋の動き
▲一教(二教・三教・四教・五教)の裏は螺旋の動き
 ・・・合気道は宇宙の動きを表現した武道です。 

関連ブログ記事:合気道における螺旋


我が道場・清田体育館の情報はこちら⇒:清田区体育館へのアクセス


読んでいただき、ありがとうございます。

合気道ブログで日々の稽古を考える。

紹介:札幌で合気道するときは・・・札幌合気道会について
合気道ブログ|稽古日記 posted by Aiki_Master at 07:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
トップページはこちら : 合気道ブログ|稽古日記