2015年06月02日

内転換のもう一つの解釈?

前回ブログ記事:
四つの体捌きの内のひとつ : 内転換』の続編です。

内転換は、内側に巻き込む(収束的な)体捌きと述べましたが、
実は、これとは別の解釈を持って稽古している合気道会・団体も
あるようです。※巻き込みの捌きは、四つの体捌き以外の捌きとしている。


(1)解釈概要 --------------------------------------------------
内転換は、『受けの内(表)側へ転換(外転換)する体捌き』と
解釈しているようです(下図参照)。

受けの内側に外転換

私が過去に出稽古させて頂いた幾つかの合気道会のうち、
二団体が内転換の体捌きについては、上記の解釈をされて
稽古していました。

この体捌きの稽古方法は、以下イラストのようになります。
※上の図とは、半身の向きが左右逆ですが、ご了承ください。

内転換3

しかし、この体捌きでは、受けに背中を向けていることになります!
受けが表(内)面に対して取りが裏(外)面をさらしているという
状況は、受けの方が有利です。受けが取りの死角に入っている
状態だからです。武道的に問題のある体勢です。
後ろもしくは横から刺されたり、当身を入れられます。😞

私が過去に出稽古へ行った少なくとも2団体の合気道会で、
この体捌きを四つの体捌きの内のひとつとして稽古している
ということは、何らかの形で伝承されて来たのでしょう。
※上記2団体はお互いに、過去から特に交流があった訳ではない。

本来の巻き込み形の内転換が、巻き込み形ではなく、
通常の転換(外転換)と誤解釈?されたのでしょうか?

全国の合気道会で、同じように稽古されている団体が他にも
いらっしゃるかも知れません。

☆ちなみに、後ろ取り系の技は、最初から後ろより襲われた場合を
  想定しての稽古方法なので、根本的に問題無しです。


(2)伝承された経緯として考えられるケース ----------------------------
伝承された経緯として考えられるケースがあります。
以下の動画を見てください。

藤田昌武師範が両手取りで受けの表(内)側から転換(外転換)
で捌き、呼吸投げしている動画です。

但し、両手取りと言っても、投げる側の片方だけ取らせて、
もう片方は取らせずに捌いています(半流体法?)。
※開始1:33と1:36で各々左右に投げています。

1:36のところで、藤田師範が『内転換』と言ってから、受けの
内側を通常の転換(外転換)で捌いて、技を繰り出しています。

Fujita Masatake Shihan 8th Dan Aikikai


前々回のブログ記事からの繰り返しになりますが、
合気道技は、細かい点で「こうでなくてはならない」という教科書的な
決まりきったところが無い為、ある意味自由度が広いというか、
途中、師範の考え方で変更される流動的な部分もあるのかと
考えられます。

動画では、藤田師範自身が、内側に捌く通常の転換(外転換)を
内転換と呼んでいます。内側に巻き込むのも、内側で通常転換する
のも、両方とも内転換としています。合気道技の定義はアバウトです。
※合気道は型稽古だが型がない?とか(合気道技も常に変化する)。

それから、両手取りという前提ならば、両手が塞がっているので、
攻撃されずに投げることができるため、投げとして成立するという
ことです。※他に両手取りの腰投げなどが存在します。

また、片手取りでも、崩しが入っていれば、攻撃されないため
(されたとしてもダメージ小)、受けの内側を外転換で捌くことが
問題無く成り立つということです。

おそらく、この動画のような捌きを見たどこかの先生が、内転換を
本件のような体捌きとして稽古法に取り入れた可能性があるでしょう。
☆真相をご存知の方が、いらっしゃれば、コメントをよろしくお願いします。


(3)受けの内側へ一瞬背面を向けて捌く技 ----------------------------
本件は、止まった状態からだと、受けが崩れていないし、
片手取りだと、空いている片方の手で当て身攻撃がされるので、
確かに武道的に問題はあります。

しかし、柔道のように、試合において当身は反則といった前提
条件があれば、背負い投げのように、受けに背中を見せる技も
成立するのかな と思うところであります。

でも、合気道に試合は無いし、当身が反則という話もありません。

まぁ、柔道の場合、組み合って両手が塞がっていれば、当身を
入れられるということはないですし、組み合っていない状態でも、
一瞬の内に(当身を入れられる隙も無い内に)、捌ければ、
問題無しです。

そこで、上記動画のように受けの表(内)側へ自身(取り)の
裏(外)側を向けて、捌く投げ技について、合気道では、どの
ような技があるか、調べてみました。結構あるようです。

参考となる非常に良い動画が見つかりました。
合気道 神武錬成塾」の白川竜次先生(合気会 5段)の
連続技演武です。

感動する! 美しい正統派な合気道

いや〜、非常に綺麗な動きです。しなやか・・・
受けも非常に上手いですが、無論取りが素晴らしい。
当然、軸はブレてなく、半身は保たれているし、柔らかく、
姿勢が良い!繊細かつダイナミック!理想的です!

さて、受けの内側へ一瞬背面を向けて捌く技の箇所は以下です。

0:14〜片手取り 受けの内側へ転回足にて呼吸投げ
0:16, 0:52〜半身半立ち正面打ち一教投げ 受けの内側へ転換
1:27, 1:29受けの内側へ転換にて片手取り(又は両手取り)のアカツカ
1:34, 3:54〜横面打ちから受けの内側へ着座しながら転換にて順手天秤投げ
1:48, 2:21〜肩取りで受けの内側へ着座しながら転回足にて呼吸投げ
1:50〜片手取りで受けの内側へ転回足にて呼吸投げ
    (藤田昌武師範の動画の技に近い。但し、受けの掴んで来る方向が異なる)
2:29〜片手取りで転身から一瞬受けの内側へ入り身(側方)して、腰投げ
    ※腰に乗せながら転回足で180度体を変更して投げているところが凄い。
      転回足の腰の回転が投げの原動力になっているのが分かる貴重な場面。
2:37〜正面打ち一教投げ 受けの内側へ着座しながら転回足
2:38〜半身半立ち正面打ち一教投げ 受けの内側へ転回足
3:01〜両手取りアカツカ 受けの内側へ着座しながら転換

※各技の正確な名前は分かりません。

アカツカは俗称です。掴まれた両手のうち、片方を上、もう一方を下に向け、
  四教をかけるような持ち方をして、下側に向けた方へ240度程、転換(受けの
  通る道を空ける)して、上側の掴んだ手を斬り下げて投げる。

※動画の各合気道技で、転換と転回足を間違えているものが
  もしかするとあるかも知れません。一応確認はしましたが、動画の
  切り替わりが早いため、取り違えて記載している可能性はあります。
  大目に見てやってください。


これらの合気道技では、受けの内側へ転換もしくは転回足
体捌きをしています。

これだけありましたが、動画全体では、受けの外側(裏側)へ
位置して捌く技の方が圧倒的に多いです。外側の方が安全
だからです。

下のイラストは、横面打ちから受けの内側へ着座しながら捌く、
順手の天秤投げです。上記動画では、内転換(内側へ外転換)で
捌いています。

※内入り身する通常の天秤投げは逆手(受けの背後側から腕を入れる)です。

横面打ち順手天秤投げ
二通りの捌き方がある。
(1)転換での捌き :  @で受けの内側へ入り身、Aで転換
(2)転回足での捌き: @で受けの内側へ入り身、Aで転回足


もうひとつの動画です。
故 藤本洋二 師範(八段)のブルガリアのブルガスという都市での
2006年の演武です。主にイタリアで、ご活躍されていた師範です。

Yoji Fujimoto sensei Embukai in Burgas 2006


1:56の箇所で、横面打ちからの見事な順手の天秤投げが
見れます。拍手が沸き起こります。これも内転換(内側に
通常の転換=外転換)で捌いています。
※直前の1:47と1:52では、各々左右に、横面打ちからの逆手の天秤投げ

受けに自身の裏(外)を向ける技は、他に、以下があります。

三教投げ : 三教で極めながら受けを自分の背後へ通過させ、
 反対側の横へ来た時に投げる。※極めているので背後に移動
 させても攻撃できない。

転身しながら当身を入れて繰り出す呼吸投げ : 転身しながら
 引いた側とは反対側の手で当身を入れ、受けを崩した後、内側
 へ転換して投げに到る。※当身を入れて崩し、投げに入る時は
 既に、受けは自身の側方へ(見える位置)へ投げ出されている。
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結論:本件は、本来静止した状態で行う体捌きではない。
動きの中で、両手を持ったり、崩しを入れてから、内側へ入って
おり、内転換(内側へ外転換)して、「背中を向けたときには
既に攻撃不可能な状態に成っている
」ので技として成立する。

本件体捌きは、内側へ捌くこういった応用技を、初心者が覚え
易くするための稽古法として、考案されたのかも知れません。

本件体捌きを稽古している諸合気道会・諸団体は
そのように認識しているのかも知れませんね。


読んでいただき、ありがとうございます。

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